#パプアニューギニア #1993年 #健康 #発音 #かん違い #日本語地球カフェ #みうらたかし
海外日本語教育学会提供YoTubeラジオ「にほんご地球カフェ」コートジボアール編で安高さんがお話になっていたことと似たような経験が私にもあったことを思い出しました。ちょこっと書いてみます。
パプア・ニューギニア大学はもう一度言うが、私がいた当時はこの国唯一の総合大学であった。全国から選りすぐられた優秀な学生が集まっている。この国には言語が700もあるといわれていて、学生たちもみんな一人で4つも5つも言語を操る。自分の出身部族の言葉すなわち母語、学校教育はすべて英語で行われているので流暢な英語、山間部の共通語であるニューギニピジン、沿岸部の共通語であるモツ語、それに器用な人は母方の部族語や隣の部族のことばも話す人もいた。つまりもともと異なる言語を理解したり話したりするのはお手の物という感じだ。
ある日わたしはひどい風邪にかかっていた。咳が出て鼻が詰まり少し体もだるかったのだが、なにせ日本語の教師はここには私一人である。無理をして授業に出た。教室に入れば元気な学生たちがいるのでいつもと変わらず授業した。
わたし:「はい、わたしの後からいってください。あしたオーストラリアへいきます。」
学生全員:「あしだ、オースドラリアへいきむあす。」
この瞬間わたしは何が起こったのか大変困惑した。学生たちのリピートが見事な鼻声だったのだ。それも全員同じようなきれいな鼻声で、「あしだ、オースドラリアへいきむあす。」
そうか、わたしはひどい風邪で鼻が詰まっていたので、私のモデルがひどい鼻声だったのだ。それにしても、学生たちの耳の良さには感服だ。みんな語学の習得には慣れているとは思ったが、ここまで正確に音をまねることができるとは。
その日はもう発話練習をすることはあきらめて、文化の話や文字の練習をすることにした。ここには日本語教師は私一人、在住の日本人も本当に少ない。つまり私の日本語が、日本語のすべてであるといっても過言ではないのだ。なにかしら肝に銘ずる出来事であった。