2023年12月13日水曜日

親分、失礼いたします。

#韓国 #2000 #かん違い #敬語 #スーパー学習者 #HOSHI TORU


 日本語学習のレベルに応じて、学習する方も気になるポイントが違うのは言うまでもない。学習レベルも「上級」から「超級」を目指すぐらいになると、「敬語をちゃんと使わなければ」と気にし始めるらしい。昔、韓国の日本大使館主催の日本語講座で教えていた時の事、上級クラスの授業で、ある学生が日本に研修に行っていた時のエピソードを語ってくれた。彼は韓国外交部(日本で言えば外務省)所属の若い外交官で、まあエリート中のエリートと言ってよかったのではないかと思う。話す日本語の流暢さもほかのクラスメートから抜きんでていた。彼の語ったエピソードは以下の通り。

 彼が日本についたばかりのころ、あるレストランで食事をしていたときのこと。彼は所用で電話をしなければならなかったのを思い出した。(その当時、携帯電話と言うものはすでに存在していたが、現在ほど普及していたわけではなく、少なくとも彼はその時、携帯電話を持ってはいなかった)。そこで、この店に公衆電話があるはずと思い、ウエイターを読んで尋ねることにした。彼は初めての日本滞在で、とにかくきちんと丁寧な話し方をしなければと緊張していた。彼は言った『すみませんが、お電話、ありますか?』。それを聞いたウエイターはちょっと困った表情で答えた。『申し訳ございません。おでんは・・・当店では、ちょっと・・』

 また別の晩、翌日が休暇だったので、以前韓国で知り合った日本人の友人に会いたいと思い、その友人から聞いていた自宅の電話番号に電話してみた。時刻は午後8時を回っていた。彼は友人の家族に失礼があってはならないと思い、緊張が高まっていた。電話がつながり、友人の家族らしい声が聞こえたので、彼はこう切り出した。『あ、もしもし、あの、ええ、お夜分、し、失礼いたします』・・・すると、電話の向こうで数秒間の沈黙が流れた後、電話は静かにぷつんと切れた。

 これが彼の語ったエピソードである。この後、教室は、私も含めて、爆笑の渦に包まれた。実はこれが彼の日本での実際の体験談なのか、それとも作り話なのかはわからない。ただいずれにしても、日本語の使い手としての彼の才能には舌を巻くほかはなかった。その後の彼は、おそらく、敏腕の外交官として、その日本語力をいかんなく発揮したのだろうと思う。

1 件のコメント:

  1. あはは。こういったほほえましい勘違いはありますよね。タイで日本語をしえているある先生が日本に滞在している時、レストランで「シーザーサラダ」を注文したら「小さい皿」を持ってきてくれたと話していました。ほんま、ほほえましい。(^▽^)/

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