#アメリカ #1980 #ネイティブvsノンネイティブ #ご当地語 #発音#HOSHI TORU
今を去ること四十余年、生まれて初めて飛行機に乗り、生まれて初めてアメリカの地を踏んだ時の思い出である。若いころは「自分は月にも行かないし、外国にも行かない」と決めていた私だったが、諸般の事情から単身アメリカ行きの飛行機に乗る羽目になった。だから、ロスアンジェルス国際空港に到着したときは、英語のネイティブスピーカーに対する警戒心、恐怖心がマックスであった。一応渡米前に英会話を習い、TOEFLの試験も受けたが、どうせ自分の英語が通じるわけはないと思っていた。さて空港で一念発起してレストランで食事をとろうと思ったとき、大きなスーツケースをコインロッカーに預けたいと思い、さらに一念発起して、空港職員の制服を着ている黒人男性をつかまえて「コインロッカーはどこか」と問うてみた。どうやら「コインロッカー」が通じなかったと見え、その黒人男性はこちらをじっと見たまま何も言わない。「ロッカー、ロッカー」と繰り返してみたが、相変わらずこちらをにらんだまま何も言わない。心なしかその目には英語の下手な東洋人に対する差別的な雰囲気が漂ってきたように感じた。しまいには彼は何も言わぬまま鼻をひくひくと動かし始めた。これは、おそらく差別的態度をとられているんだと思い、何とかこの場を立ち去ろうと思い始めたとき、かれは突然晴れやかな笑顔になり、“Ah, Locker!”と言って、丁寧に方角を示してくれた。自分では”rocker”でなく”locker”といったつもりだったのに・・・。その数日後、ある大学の学生寮のなかのカフェテリアでの事。「これをください」と何種類かあるランチプレートから料理を選んだ。そこにいた黒人男性のアルバイトらしきスタッフから、サラダはいるのか、ドレッシングはどれにするか、スープはどうだ、飲み物はどうするという、お決まりの質問攻めが来た。ほとんどは何とか切り抜けたが、一つだけ彼が何を言っているのかさっぱりわからないので、何度も聞き返した。相手は何やら「テイトウ、テイトウ」というような言葉を繰り返している。「テイトウって何だ?知らない単語だなあ」・・・。最後に彼は見事に抑揚をつけた声でゆっくりと” p’Tei-Toe ”のような発音をして、ケースの中にあるマッシュポテトを指し示した。今思えば、彼はpotatoの発音が聞き取れない外国人のために、言葉を強調して発音してくれたのだが、その強調の仕方が、あくまで英語のアクセントや抑揚を際立たせる方式だったために、残念なことに日本人の耳には、余計に分かりにくくなってしまったのだ。外国人にはっきりわかるようにと思って、ネイティブが考える強調の仕方は、あくまでその言語の音声体系の特徴を際立たせるので、ノンネイティブにとっては逆に「ありがた迷惑」なケースも多いのではないか。そう考えると、日本人がノンネイティブに対する思いやりから、言葉を区切って強調する「に・ん・じ・ん」とか「お・も・て・な・し」なんかも、日本語のノンネイティブには「ありがた迷惑」かもしれない。
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